第20章 Romans5:3-4
「世界が違うってことは…それだけおまえが傷つくことが多いってことなんだよ…」
カラカラと透明な音が狭い店内に響いた。
「……ああ、わかってるよ」
雅紀は言葉を選んでくれたけど…
こんな稼業をやってる人間と、翔みたいな金持ちが釣り合うわけもない。
それに俺達のやってることをいつか警察に通報してしまうことだってあるかもしれない。
それがパートナーのためだと、真剣に思って。
本当に育ちがいい善人の中には、そういう風に考えるやつがいるらしい。
以前雅紀はそのせいで、抱えてる暗殺者が逮捕される寸前で事故死してしまったことがあった。
だからこそ常日頃俺達に、自分と釣り合うやつをパートナーに選べと言ってた。
だから身内だったり、似たような裏稼業の女や男をパートナーにしてる奴は多かった。
「…おまえや和也は、大人になる前に世間に放り出されちまっただろ?」
「ああ…」
「まあ、こんな仕事やらせててなに言ってんだって思うかもしんねえけどよ…俺はなるべくおまえ達には、もうこれ以上苦しいことのないようにしてやりたいんだよ」
雅紀はグラスをかき回すのをやめて、その指を弾いて俺に冷たい水を飛ばしてきた。