第20章 Romans5:3-4
「そんな風に思うよう、仕向けたのはアンタだろ」
「…それが俺の仕事なもんでね」
こんな風に慎重な雅紀だからこそ、俺達は守られてる。
その事実には感謝してる。
雅紀は皮肉に笑うと、またコニャックの瓶を手に取った。
ゆっくりと蓋を開けてグラスに薄い琥珀色の液体を注ぐ。
「な?あの物件を持ってたことは、別におまえに言う必要ないだろ?」
「…わかった」
「俺だってな…」
「翔に手を出さないでいてくれて、感謝してる」
「……え?」
ものすごいびっくりした顔で俺のこと見てる。
その顔に、俺のほうがびっくりした。
「なんて顔してんだよ」
「え…だって、智が櫻井翔のことでそんな素直になるなんて…」
「俺のことなんだと思ってんだよ」
そう言ったら、雅紀は苦笑した。
「だっておまえ…」
「でも、この先も翔になにかあって、その原因があんたやあんたの抱えてる奴らだったときは全員殺す」
「智…」
「その決意は、変わってないから」
「…わかってるよ。そんな事…」
ぐいっとまた、コニャックを飲み干すとグラスをカウンターに置いた。
「別に俺は、俺の抱えてる奴らの恋愛を禁止なんてしてねえよ。ただ、あのいいとこのボンボンとは世界が違いすぎる」
苦々しい顔をして、グラスの中の氷を指でかき回した。