第20章 Romans5:3-4
コニャックの入ったグラスに口をつけると、一気に煽った。
「…旨え」
暫く目を瞑って余韻に浸っていたが、グラスをカウンターに置くと片肘をカウンターにつけて寄りかかった。
「あの部屋は、もともと賃貸で貸し出されてたんだ」
「…ふうん…」
「で、あの時の入居者が退去した段階で俺が借りた。それが近頃、オーナーが売りに出すとか言うから、俺が買ったんだよ」
「ずっと監視してたのかよ?」
「……」
すっと雅紀の顔から笑みが消えた。
「それは、松岡さんがずっとやってただろ?」
「あ?」
「松岡さんにやらせてたんだろ?おまえが」
「だからなんだよ」
俺と翔が別れたことは、雅紀や和也は知ってる。
だから翔を消すかもしれないと思って、松岡の爺さんに最初の頃は見張りを頼んでた。その流れで今は様子を見守ってもらうってことをしてもらってる。
「だから俺達は監視はしてないってこと」
「…ホントかよ」
「そりゃ最初のうちは不安だったから、こっそりと何度か監視はしたけどな。でも櫻井翔は真面目に医学生してたよ。だから俺が監視することはやめたんだ」
「……」
そんなことしなくても、翔は賢いからわかってる。
自分がなにかを喋ってしまったら、家族に危害を加えられるかもしれないってこと。
そんな風に思わせるよう、釘を刺したのは雅紀自身だ。