第20章 Romans5:3-4
「そおかあ?どっか浮世離れしてっけどな」
『おまえに言われたかねえだろ、アイツだって…』
爺さんは笑いだした。
「そうかな?」
『そうだろ?』
少しの間沈黙が来て、ジッポで火を点ける金属音が聞こえた。
息を吸って吐き出す音が聞こえたから、紙タバコにでも火を着けたんだろう。
「まあ、変わってることは認めるけどさ…」
『自覚しててそれかよ。めでてぇな』
噛み殺すような笑い声が聞こえて、爺さんはまたタバコを吸った。
『おまえ調べるなら、部屋貸してやろうか?』
「え?」
『ちょうど近くにいい物件があってな。格安で貸してもらえることになったから、貸してやろうか?』
「ああ…別にそこまでしなくても…」
『いいから。貸してやっから。鍵と住所、おまえんとこのポストに後で入れておくから』
「え。でも…」
『じゃあ、言ったからな?どう使うかは、お前次第だからな?』
「ちょっと爺さん…」
『んじゃな。クソして寝ろよ?』
「ちょっと!」
怒鳴った頃にはもう通話は切れていた。
「人の話聞けよな…クソじじ」
テーブルに置いていた紙タバコのパッケージに手を伸ばした。
封を切って一本取り出すと、爺さんのようにジッポで火を着けた。
息を吸い込むと、久しぶりの刺激のある煙が脳に突き刺さるようだった。