第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「ごめん。ちょっと困ったことになってるのかなと思って聞いたの。私、能村さんから色々と話しを聞いているから、もしも手が必要なら呼んでね?ここに待機してるから」
瀬戸さんはニッコリ笑うと、スタッフルームの方に戻っていった。
他のスタッフも、俺の顔を見て察してくれたのか、がんばれよと声を掛けて戻っていった。
俺は急いで給湯室に行って、サーバーからコーヒーをカップに注いだ。
急なことだったからわからなかったけど、井ノ原先生や三宅先生の分まで淹れたのは余計だっただろうか。
ミーティングルームに戻ると、能村さんはまだ泣いたままだった。
俺はコーヒーの入ったコップを置くと、自席においてあるティッシュの箱を取りに再び部屋を出た。
すぐに取って返すと、三宅先生がティッシュの箱を受け取って能村さんに渡してくれた。
「…話はわかったよ?でもさ、能村さん。検査をこの先しないと、いまどういう状況かもわからないでしょ?やらないってわけには行かないと思うよ」
「そうだね…能村さんの状況はよくわかったよ。そのへんはうちの治療相談センターでどういう制度が使えるか、よく相談しよう。うちの部長にも話して、俺達も力になれることがあったら力になるし」
「でも…私…」
「辛い状況なのはよくわかったよ?でも治療しないとなんにも前に進まないんだ。お子さん受験なんでしょ?」