第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「そう。ちょうど論文書いてる症例の患者さんがお二人居てね。お二人も出ることは珍しいから、その方たちの手術から術後まで関わっていくことになりそうなんだ」
三宅先生は申し訳無さそうに俺を見た。
そんな三宅先生の頭を、井ノ原先生がぽんと叩いた。
「なに!?痛いんだけど!」
ちょっと怒った顔をしてる三宅先生を丸無視して、井ノ原先生は話を続けた。
「主担当の指導医はしばらく俺になるんだ。もちろん他の先生にも指導は分散してもらうけどね。だから能村さんの担当、一緒にやってみるか?」
「…はいっ…」
「まあまだ早いってことは理解してるけどね。オペにもなりそうだし、勉強してくれよ?」
「はいっ…よろしくご指導お願いいたします!」
それから、能村さんが今日出勤しているか確認して、少し話ができないか聞いてみたら大丈夫だっていうから、そのまま能村さんに話をすることになった。
「…肉腫…ですか…?」
俺はなんにもできず、ただミーティングルームの隅で会話の記録を取っていただけだけど、能村さんの声が震えているのがわかった。
「そう。これが生検の結果ね…ここに書いてあるのが、粘液型脂肪肉腫っていうものになります」
さっき俺に教えてくれたように、井ノ原先生が能村さんに話している。