第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「…ここまで6年もなにもなかったってことは、良性だろうと思ってたけどね」
三宅先生が天井を見上げながら、ため息を付いた。
その顔が暗いことが、あまり良くない状況なのを示している。
「まだ調べてみないことにはわからないけど…あまりにもふくらはぎが膨れすぎてるし、足首にも影響が出てるってことは、相当大きくなってると思うんだ」
井ノ原先生が講義でもするような口調で説明してくれている。
それがどこか遠い世界の症例を聞いているような気分にさせられるけど、これは能村さんのことなんだ。
「あまり、よくない状態ってことですね…?」
「そうだね…できるだけのことはするけど…」
井ノ原先生の顔が、初めて暗いものになった。
「まずPET/CTを撮ってみよう。あと胴体や頭部の造影MRIやCTもやらないとね」
三宅先生がやっと顔を俺に向けた。
「翔、どうする?」
「え?」
「担当…井ノ原先生は、翔が一緒に担当してもいいって言ってくれてるんだけど」
「えっ本当ですか!?」
井ノ原先生を見上げると、しっかりと頷いてくれた。
「いやね、しばらく三宅は他の病院に応援いくことになってね…」
「えっ?そうだったんですか」