第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「はい…」
なんで、最初の診察で気づくことができなかったんだろう。
一回たしなめられてるのに、また同じことを思ってしまう。
「ほら、湿気た顔してんじゃないよ。術後管理だって、今回は難しい手術の術後なんだから大事な仕事なんだからね?」
「はい!引き締めます!」
三宅先生は俺の顔をみると、ニンマリと笑った。
「しょげなくなったじゃん?」
「へ?」
「去年まで自分で気づくことができなかったら、しょげて泣いちゃってたのに」
「…泣いてません」
「うっそだあ。泣いてたでしょ?」
「泣いてませんって!」
「でもしょげてたよね?」
「しょげ…ては、いました」
「ぶぶっ…」
三宅先生はしばらく笑いながら俺の顔を見ていたが、優しい顔で俺の頭に手を乗せた。
「いい子」
「はい?」
「ちゃんと自分のやるべきことがわかるようになってきたね」
真顔で褒められたのはいいが、子どものように頭をぽんぽんとされて困惑した。
「俺、何歳児だと思われてるんすか…」
「28歳児?」
「おら、そこの45歳児!始めるぞ!」
井ノ原先生が三宅先生の頭をバインダーで叩いて通り過ぎていった。
「痛っ…」
「ぶふぉっ…」
井ノ原先生にかかれば、三宅先生も45歳児になってしまうのか…
って、三宅先生って45歳なんだ。
え?45歳?