第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
整形外科のスタッフルームに入ると、もうすでに先生方が揃っていた。
これから整形外科全体のカンファレンス(症例検討など)が始まる。
この病院では、整形外科全体のカンファレンスを週に一回行っている。
今日はちょうどその日に当たる。(だから一日休みは貰えなかった)
「井ノ原先生、お疲れ様です」
ちょうどスタッフルームの奥にある整形外科部長室から出てきた、副部長の井ノ原先生に挨拶した。
「お、櫻井くん。お疲れ」
「今日は午前休ありがとうございました」
「休んでくれて助かったよ。組合、うるせーからさ」
ここは私立の基幹病院の中でも整形外科に力を入れている病院で、労組の力も結構強い。
だから休出や夜勤の多い整形外科は労組に睨まれている。
そんな理由で結構休みは無理やりとらされる。
今日も半日だが「無理やり半休」ではあった。
しかしそれでも週に一度の全体カンファレンスは、日頃診ることのできない症例の検討もあるので、絶対に出なきゃいけない。
初期研修医からお世話になっているが、基幹病院だけに実に様々な症例が集まって来る。
「休んで助かったって言われるのって、なんだか複雑ですね…」
「あっはっは!悪かったよ!そういう意味じゃねえからな!?」
バツンと背中を叩かれた。
「痛え…」
整形外科の弱い桜井総合病院だったら、こうは行かなかっただろう。
本当にこうやって外に出て勉強できていることに、感謝してる。
「わりぃ、わりぃ。カンファレンス、今日は櫻井くんの患者も上げるんだろ?」
「はい。明日手術なんで…」
「まあ三宅と一緒だから大丈夫だとは思うが、しっかり疑問点潰しておこうな?」
「はい!」
資料とノートパソコンを持って、症例検討室へ向かう。