第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
──こんな風に日々は流れていく
俺がなにを思っていようと
智がなにを思っていようと
そんなこと関係なく、日々は消費されていく
俺達の意思とは関係ない、大いなる力を受けながら──
「櫻井先生、お疲れ様です!」
「今日は午後からだったんですね!」
元気のいい看護師たちの挨拶を聞きながら、病棟の受け持ち患者を見回りする。
毎日毎日、繰り返し行われる儀式。
「ああー!櫻井先生っ…」
「どあっ…」
「ぎゃー!ごめんなさいっ…」
「いいから…ワゴン、どかして…」
廊下の角を曲がったら、カルテを表示させたノートパソコンを乗せた看護師用ワゴンに激突され、あまつさえタイヤが俺の足にまだ乗っている。
「いってー…」
「ごめんなさい!ごめんなさいっ!患者さんのことに気を取られてて…」
「いいから…で?どの患者さん?」
「あ…すいません…この方なんですけど…」
今年度採用されたばかりの看護師から見たら、俺は専攻医だけどとっても先輩に見えるそうで、恐縮されながら喋られるのが最近くすぐったい。
まだまだ下っ端という意識があったけど、どんどん職場には新しい若い力が入ってくる。
「あー…そうだね。絶食は朝からでいいね。手術夕方からだからね」
「じゃあ明け方4時ごろまで食事OKとお伝えしていいですか?」
「それでよろしく」