第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
『なんつって、今は手が足りないくらいでさ。ごめん』
「ああ…俺も大学の頃みたいに手伝えたらいいんだけど、こっちこそごめんな」
『何いってんだよ。この事件、解決したら俺は本にするからな。それでチャラだよ』
「それは智に許可取ってもらわないと…」
『だーっ…絶対うんって言わねえだろうがっ!夢の印税生活が懸かってるんだぞお?』
「今どき印税だけで暮らしていけないって、この前いってなかったっけ?」
くすくす笑っていると、潤は少し黙った。
「どうした?」
『…よかった』
「え?」
『元気になったよな。ほんと、良かった』
「潤…」
智が去って自分の力不足なこととか色々と込み上げて、しばらくは立ち直ることができなかった。
意外にもそんな俺に寄り添ってくれたのは潤だった。
調査をしながら、なんとなく傷が癒えていったのは、実は潤の力が大きいのかもしれない。
「まあ、元気じゃないと潤のことタダで診てあげられないからね」
『そんときは頼んますよ!先生!』
「そしたら潤には大怪我して貰わないと…」
『へ?』
「俺の専門、整形外科だって忘れた?」
『…だったな』
本当は、智を救うために役立てばと精神科の領域を学ぼうかとも思った。
でも結局はその道を選ばなかった。