第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
智が俺の家を去ってから、俺と潤は智のご両親の会社「大野製作所」の従業員の洗い出しを行っていた。
もうこの世にいない人も居たりして、調査はそんな楽なものじゃなかった。
俺も大学の勉強の合間に調査を手伝って、その大変さは言葉にできないほどだった。
その中で、接触の難しい人が出た。
総務部の部長と課長、そしてその部下の3人だ。
今は海外に在住しているという。
そのうちの一人が、フィリピンに住んでいる総務課長だ。
『しかし、連絡先もわからなきゃ住所もわからない。ほんとお手上げだよ…』
古参の社員たちに聞いてみたけど、現在はフィリピンに住んでいるということ以外はわからなかった。
なんとか親戚筋を調べて、大野製作所の元従業員と偽って連絡してみたけど、縁遠くて今どうしているのかわからないと言われてしまった。
潤も俺もなんだか意図的なものを感じた。
3人ともに現在の所在がわからないように、誰にも言っていない感じだったんだ。
「だからこそ、何かある…」
『んだな。絶対、接触しないと』
「まあ、また追々でいいから、頼むね。急ぐ調査でもないし」
『何いってんだよ。本当は早く全部知りたいくせに』
「…まあね」
智のことを、今でも楽にしたいって。
智の背負ったものを、少しでも減らしてあげたいって。
その気持ちは、ずっと変わっていない。