第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
「そう…未来は、明るいよ…」
俺なんかいなくったって、舞や修がきっと明るい方向へ歩いていく。
『そうそう。そうなって貰わないと、俺もタダで診て貰えないもん』
「それはもうちょっと待ってよ」
笑いながら言うと、潤も笑ってくれた。
『期待して待ってる。で?今日はそんな話するために連絡くれたんじゃないだろ?』
「ああ。例の調査、どうなってるかなと思って」
『すまん。いま別件で忙しくて…目立った情報はないよ』
「そうか…」
潤はルポライターを目指して、最初はどこかに所属してたほうがいいと大学を卒業後、俺より一歩先に大手の雑誌社に就職していた。
しかし最初は良かったが、経験を積んで実際に紙面を飾る記事を書けるようになってきてからが問題だった。
事実に反する記事を書くことを強要されたんだ。
潤はそういうことはできない男だ。
ルポライターとは「ありのままを報告する」のが仕事だ。
そんなことを繰り返すうちに、相当参ってた。
だから智の亡くなったご家族に関する調査は停滞していた。
最近やっと今まで所属していた雑誌社を離れてフリーランスになったことで、潤は自由に羽ばたくことができた。
精力的に行きたかった取材に行って、自分のルポを大手に売り込んでるところだ。
『早いとこ、フィリピンに住んでる総務課長に接触できたらだいぶ前進すると思うんだけどね』
「そうだな…その人がなにか握ってることは間違いないんだから」