第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
風呂から上がってから、潤に連絡した。
『もしもし?』
「俺。おはよ」
『なんだ翔か。久しぶりだな』
「ああ…ここんとこ忙しくてね」
『まあ、本格的に医者になったんだもんな』
「といっても、まだ専攻医だから。学ぶことはまだまだたくさんあるよ」
『いつになったらタダで診てくれるんだか』
笑いながら言われて、俺も笑った。
そういえば、遠い昔にそんな約束をしたかもしれない。
『桜井総合病院で働けば、時間的余裕はできるんじゃないのか?』
「まあ…そうかもしれないけどね。まだ学んでる身だからどこで働いたって一緒だと思うよ」
『すげえな。大学6年も行って、研修医で2年働いてやっと専攻医になったのに…まだそれでも研修中って…』
「専攻医はまだまだ先が長いからね。基本領域の専門医資格から更にサブスペシャリティ(より専門性の高い診療科)までカバーしてるから」
『まあそうじゃないと医者に命なんて預けられないよな』
潤にそう言われると、少しくすぐったい気分になる。
直接的な言葉じゃないけど、なんだかこの男に認められているようで。
「精々頑張るよ」
『ああ、頼もしいね。桜井病院の未来も明るいんじゃないの?』