第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
──俺は
あなたの触れたところの熱さ
あなたの吐息に粟立つ皮膚
あなたのしなやかな指から生まれる悦び
あなたの快感に打ち震える声
あなたの愛おしそうに俺を見る目
なにも忘れていない
忘れられるわけがない──
「ん…」
目を閉じていれば、彼の顔が見える。
彼の指の幻影が俺を震えさせる。
「あぁ…」
波立つ水面が俺の顎を撫でていく。
「さと…し……」
ねえ、あなたも
あなたも、俺の幻影とこんなことしてる?
自分の熱を握りしめた手をゆっくりと動かす。
湯の中にいるのに、背筋をぞくりと通り過ぎる快感がすぐに昇ってくる。
こんなつもりじゃなかったのに…
智の顔を思い出したら、止まらなかった。
「智…さと…」
汗かお湯かわからないものが額を伝っていく。
久しぶりにこんなことしてるから、あっという間に達してしまいそうだった。
幻影の智が、意地悪く俺の手の動きを止めた。
『まだ、だめだよ──』
どうして
もう解放したい
お願い
とめないで
『まだ足りない』
どうして
だってあなたは
俺ばかり善がらせて
自分のことは後回しだった
『気持ちよく、なりたいだろ?』
なりたい
もうそこまできてる
もっとキツく握りしめて
もっと乱暴に動かして
「あっ…あっ…ああっ…」
そうやって、淫靡な目で俺を見て。
もっと俺の奥深くを犯して。
「イっ…くっ…」
弾けた瞬間、まぶたの裏の智はゆっくりと笑った。
俺の奥底に熱を突き立てるみたいに。