第19章 Epistle to the Galatians6:5-7
給湯ボタンを押してリビングに戻ると、コーヒーのいい匂いとパンの焼ける匂いが漂っていた。
朝食の準備をすると、早速食べ始めた。
その間も業務用のスマホには朝の連絡事項が届いているようで、ブルブルと振動が続いている。
──専攻医になって二年目になる。
今日は少し遅れて(午前中いっぱいは無理だけど昼前までに)出勤していいと上長より許可が出たから、最近にないのんびりとした朝になってる。
ここのところ夜勤で徹夜が続いていたから、この時間を精一杯利用してリフレッシュしているところだ。
と言っても、昨日帰ってきて死体のように眠りこけたことと、これから朝風呂に入るってことだけだけどね。
本当に通いの家政婦さんを頼んでいてよかった。
じゃなければ、今頃俺は自分の出した洗濯物とゴミに埋もれて死んでいることだろう。
最悪、この家に帰らなくなっていたかもしれない。
ドラマの医者みたいに、仮眠室に泊まり込んで…
いや、ない。ないない。
あんな誰がいつ呼びに来るかわからない最悪な場所で、熟睡なんかできるもんか。
今は櫻井の経営する病院ではなく、別の私立病院で研修医から入り、現在は専攻医として働いている。
将来的なことを考えたら、すぐにでも桜井総合病院に入れとは言われたけどね。
跡を継ぐのは俺じゃないから。