第18章 Genesis1:1-5
そう言うと西島はまた笑いながら俺の顔を見てる。
こんなこと、一緒に住んでたときはなかったことだ。
ひたすら眉間にシワ寄せて、ニガ虫噛み潰したみたいな顔してたのに。
「…あんたこそ」
「え?」
またグラスにビールを注いで、ニヤニヤしたまま俺を見た。
「あんたこそ、随分変わったけど…なんかあったのか?」
そう言ったら、ニタリと笑った。
嫌な笑い方をすると思っていたら、空になったビール瓶を掴んだ。
おもむろに振り上げるから、思わず椅子から転げ落ちた。
「あっはっはっはっ…」
「なにすんだよ!?」
ゴトリと大きな音を立てて瓶をテーブルに置いた。
「知りたいか?」
「なにが」
なんだか腹が立ってきた。
立ち上がると乱暴に椅子を直して、真正面から西島のこと睨みつけてやった。
「やっと殺したんだよ」
「は?」
「俺のこと嵌めた奴だよ」
「あ…」
雅紀には聞いていたが、直接西島の口からは聞いたことがなかった。
だからどういうリアクションをしていいんだか、ぜんぜんわからなかった。
西島は腕の良い精神科医だったが、患者に嵌められて医者を続けることができなかったと聞いてる。
たまたま西島に長年診てもらっていたヤクザの組長が、ボロボロの西島を拾い上げて、一端のヤクザにしたっていう話だ。