第18章 Genesis1:1-5
「やっぱりおまえも知ってたか」
「まあ…前にここに連れてこられる時に、あらかじめどんな奴なのかは聞いたよ」
じゃなきゃ、自分のこと任せようなんて思わないし。
「まあ、知らないわけないよな…」
自虐的に笑うと、グラスのビールを飲み干した。
「別に性癖がバレることくらいなんてことはなかった。世の中、隠れゲイなんていくらでもいるんだから…」
「まあな…」
トントンとグラスの縁を指で叩くと、俺をまっすぐに見た。
「許せなかったのは、あいつの思考」
「どんな?」
「別に、医者は続けられたんだよ…ゲイだって知っても俺のとこに来てくれた患者はいたんだから」
「じゃあなんで辞めたんだよ」
「笑ったんだよ、アイツ。俺が失職したってことを知って」
ぎゅっと空になったグラスを握った。
「俺が医者を続ける限り、どこまでも追いかけてきて…」
少しグラスを見つめたまま黙った。
「俺の患者になってやるって」
確かに…
西島はオッサンだけど、苦み走ったいい男だ。
なのに笑うと男でも女でも魅了するような、人懐っこい笑顔を浮かべる。
身長も高いし、大学も良いところを出ている。
所謂、優良物件ってやつだ。
そりゃ、西島に恋してトチ狂う奴がいてもおかしくないだろう。
西島が殺した奴っていうのも、そういう一人だったんだろうけど…