第18章 Genesis1:1-5
そういうとおもむろに俺に手を伸ばしてきた。
「なんだよ?」
「ちょっと動くなよ」
怖い顔で言われたから大人しくしてたら、西島の手が俺の額に触れた。
「…飲む前から顔が赤いと思ったら。おまえ、熱があるじゃないか」
「言ってなかったっけ」
「ここに着いた途端に寝こけた奴が、俺になにを言うんだよ」
「ごめん…」
「いつから?」
額から手を離すと、また立ち上がって冷蔵庫の方へ歩いていった。
「その…外国で仕事してたときからだから…10日前くらいから咳はあった」
「ああ…だから、魘されてたのかな…?」
「え?」
「前、桜井病院の息子んとこにいた時と同じだろ?」
そんなことないだろって思ってたら、顔に出てたみたいで苦笑いされた。
「熱出してて、おまけになんの仕事だか知らないけど、キツイ現場だったんだろ?体も極限に疲れてるわけだ」
「まあ…」
「少し状況が似てるだろ?だから魘されたんだよ」
ふと、空港で出会ったあの男の顔がよぎった。
父さんの会社にいたころより、どことなく荒んだような。
だらしない雰囲気になっていた。
チリチリと嫌な感覚が胸に広がる。
「なにか他にあったのか?」
「…あったけど、日本に帰ってきてからで…」