第18章 Genesis1:1-5
「そうだよ。最初に俺のとこに来たときより、随分人間らしくなったよ」
「自分のおかげだっていいたいわけ?」
「そうだって言ったら?」
「…ありがとうございます」
またなんらかのスイッチを押してしまったらしく、西島はしばらく笑ったままだった。
「あー、笑った…」
「楽しそうでなにより」
「まあ、最初にここ来たときの智も味わい深かったけどな」
「味わい深いって…食い物じゃあるまいし」
「食い物っ…」
また笑ってる。
「あんたそんなによく笑ったっけ?」
「あーおかしい…」
目尻の涙を拭いながら、立ち上がった。
「ビールまだあったかな…」
アイランドキッチンの向こうにある冷蔵庫まで歩いていく。
「で、なんだっけ?」
「だから…あんた、そんなによく笑うやつだっけ?」
「そりゃ、人間なんだから変わることもあるだろ?大体、あれから何年経ってると思ってんだよ」
「まだ5年くらいだろうよ。だけど…そんなに人間って、変わる?」
「変わることもあるし、不変なものもあるさ。ただ人間は生きてる限り変化し続ける生き物だと、俺は思ってる」
瓶ビールを持ってくると、栓抜きで栓を空けた。
自分のコップにビールを注いで、俺のグラスにも注いでくれた。
「そんなもんかね」
「元医者の俺が言ってるんだからそうなんだよ」