第18章 Genesis1:1-5
西島がウォークインクローゼットに服を仕舞って、それから俺の着ていた服をベッドに置いてくれた。
「…昨日まで出かけてたのに飯作ったの?」
昨日まででかけていたのならば、自炊なんか億劫なはずだと寝ぼけた頭で考えていた。
「おまえがあんまり寝るから、家事は捗ったし買い物も行けたんだ」
生活感があまりない顔してるのに、こいつはやたらとマメだったのを思い出した。
しかも結構な規模の組の幹部でもあるヤクザなのに、外食しない日の飯は自分で作るし、掃除や洗濯も自分でする。
決して組の若いもんに自分の世話はさせない。
させてるのは送迎くらいだった。
それも組長命令で、本当は自分で運転したいくらいなんだと。
ヤクザじゃなかった頃のことを決して忘れないためだって。
その話をしていた西島の目は、ゾッとするほど冷たいものだったから良く覚えてる。
「今から温めるから、早くこいよ」
「おん…」
まだぼんやりしてる頭を振った。
ベッドに置かれた服をそのままに、パジャマのままでリビングまで出た。
飯のいい匂いが漂っていた。
キッチンのほうに目を向けると、スエットの上下という格好にエプロンをつけてる西島が見えた。
飯を作るときのいつものスタイルだ。
キッチンのダイニングテーブルに黙ってつくと、飯が自動的に出てきた。