第18章 Genesis1:1-5
「智、着いたぞ」
いつの間にか眠っていたようで。
気がついたら、西島の家があるマンションの前に着いてた。
「ああ…ありがと」
「いいってことよ。バイトなんだから」
そう言うと、人差し指と親指をくっつけてお金のマークを作って笑ってみせた。
「ありがと…ほんと」
手荷物だけ持つと、ワゴン車を降りた。
「また連絡する」
「ああ。じゃあな。ゆっくり休めよ?」
「言われなくても休む」
「違いねえや」
笑いながらパワーウインドウを上げると、車は静かに発車した。
しばらく見送ってから、マンションの中に入った。
オートロックの操作盤で部屋番号を押して呼び出すと、応答もなしにいきなり自動ドアが開いた。
「…なんとか言えよな…」
ぼそりと独り言を言うと中に入った。
部屋の前に着いて、呼び鈴を押すとすぐにドアは開いた。
「智」
「よお…」
なんて挨拶していいか、未だによくわからない。
俺の治療をしてくれてる医者…というか、元医者のヤクザ。
「入れよ」
「うん…」
どこかに出かけていたのか、白のワイシャツにスラックス姿だった。
リビングに入ると、少しタバコのニオイが漂っていた。
「悪いな。部屋散らかってて。俺も昨日帰ってきたとこだったんだ」
「それなら雅紀に言えばよかったのに」
そう言うと、少し部屋の片付けをしながら俺の顔を見た。
「じゃあ心配かけるようなことすんなよ」