第18章 Genesis1:1-5
「うるさいじゃねえだろ?」
ひやりと底冷えのするような迫力のある松岡の爺さんの声。
久しぶりに聞いた。
「…離して」
「ごめんなさいだろお?」
その時、後ろの車がクラクションを鳴らした。
とっくに信号は青に変わってる。
「ごめん…」
ニヤリと笑った松岡の爺さんが手を離すと、和也は後部座席に崩れ落ちるように座った。
「出すぞお。シートベルトしろよお」
また間の抜けた声を出すと、爺さんは車を発進させた。
滑らかに朝の東京の街を車は走っていく。
「なんなのあのジジイ」
素直にシートベルトを締めながらも、悪態をつくのは20歳を過ぎた今も相変わらずだ。
「おまえねえ、そういうの良くねえよ?」
「ジジイはジジイでしょうよ!」
「これでも昔はブイブイ言わせてたんだぞお?」
戯けて言っているがこの爺さんは腕利きだったんだ。
和也のことなんか、その気になったら今でも瞬殺できるだろう。
「ぜってー殺してやる」
「ああ。いつでもいいぜ?」
「ムカつく!ムカつく!ムカつく!」
その後は、車の中は静かだった。
和也はぷりぷりしてたけど、しばらくしたら松岡の爺さんの方へ目を遣ったまま黙ってる。
目が据わってるから、どうやって殺そうかシュミレーションをしてるんだ。