第18章 Genesis1:1-5
帰りの車内は、散々っぱら和也のことを褒め倒す爺さんの声しかしなかった。
高速を降りて下道に入ってもそれは続いていた。
「爺さん…その辺にしとかないと…」
「ああ?なんだってんだ?」
赤信号になり、爺さんが笑いすぎて涙目になった目を擦りなりながら後ろを振り返った瞬間、和也がシートベルトを外した。
「あーあ」
あっという間に和也は運転席越しに松岡の爺さんの首にサバイバルナイフを突きつけた。
それはいつも和也が大事に身につけているナイフで、今回は使う予定がなかったから日本に置いたままになっていて、さっき空港で爺さんから受け取ったばかりの物だった。
「俺…なにが一番キライって、バカにされることなの」
「へーえ」
爺さんはギアをパーキングに入れると、意にも介していないような声を出して前を向いた。
「冗談だと思ってるわけ?」
「くそチビのすることだからなあ…」
「だから!」
怒鳴るような大きな声を和也が出した瞬間、運転席のシートが倒れてきて松岡の爺さんの手がナイフを持ったままの和也の手首を掴んだ。
「冗談だとは思ってねえよ?この俺に向かって、ナイフ突きつけてんだからよお…」
「離せよっ」
和也は殺しの腕はいいけど、それは頭の良さからくるもので腕力では俺にも敵わない。
だから年は取っていても相変わらずの馬鹿力な松岡の爺さんに、易易と手首を押さえられている。
「おまえ、もう少し筋力つけろや」
「うるさいっ…」