第18章 Genesis1:1-5
「ねえ、智はこのまま西島んとこ行くの?」
「ああ…」
なんだか知らないが、治療が終わって西島の家を出ても頻繁に連絡が来る。
今日も帰国したらしばらく滞在しろと雅紀からも指示が出ている。
「つまんないの」
「遊んでんじゃねえんだ。んなこと言うもんじゃねえ」
ゴチっと鈍い音がして、和也が悲鳴を上げた。
「ひっどおおい!なんで殴るの!?」
「智が困ってんだろ」
「ぜんっぜん、困ってない!」
人のことでよくもまあこれだけ言い合いができるもんだ。
そのまま駐車場の車に着くまで、爺さんと和也は俺のことで言い合っていた。
「俺のほうが智と付き合いは長いんだからな」
「時間の長さだけじゃないでしょ!?俺なんか智とキ…」
「黙れ」
思わず口を挟んだら、和也と爺さんは怪訝な顔をした。
「コーキョーの場だろうが」
朝早いから周囲には誰も居なかったが、念の為だ。
和也の声は高いから通るし。
「智にそんな羞恥心があったなんて…」
「キなんだ?キ?」
「ちょっとおじいちゃんは黙ってて」
「おい。仲間はずれはいけねえ。キ?キ?」
「んもお!しつこい!」
またギャーギャー始まったから、爺さんから奪ったワゴン車のリモコンで鍵を開けて荷物を全部放り込み、後部座席に乗り込んだ。
「あっ、智コノヤロ」
「ちょっとお!先に乗らないでよ!」