第18章 Genesis1:1-5
「智…?」
和也の声で我に返った。
あの男はその場から居なくなっていた。
「あの人がどうかしたの?」
「いや…なんでもない」
周りを見渡した。
どれだけ物思いに耽っていたのか、男の姿はどこにも見えなかった。
「…オラ、行くぞ」
松岡の爺さんが俺達の背中を押した。
「ちょっともっと労ってよね!」
「最大限にジジイが労ってやってるじゃねえか」
「ちょっとは褒めてくれたっていいじゃん!ジジイ」
「ああ、チビは偉い偉い」
「ジジイぜんぜん心こもってない!」
コントみたいなやり取りを、ジジイとマゴみたいな二人が繰り広げている後ろを、なんとなく力の抜けた思いで歩く。
──あれから
翔の家を出て、自分の家に戻った。
そのまま仕事に復帰するつもりだったけど、数ヶ月も起き上がれなかったという現実は、思っていた以上に大変なことだった。
体は錆びついたように鈍ってるし、まだ日によっては寝込むこともあって家から身動きが取れなかった。
何より…
多分、翔が雅紀に全て話したんだと思う。
夢を見て魘されることを雅紀は重く見ていた。
西島という元医師のヤクザを紹介されて、治療のためしばらくそいつの家で暮らすことになった。