第16章 Matthew10:34
止めようとしたけど、智はやめてくれない。
口の中で散々俺のこと嬲ってくれる。
その間も、後ろの口を拡張する指は止まることはなくて。
何か出てしまいそうなのを堪えて、気が狂いそうだった。
「お願いっ…俺っ…本当にも、限界っ…」
「翔…」
その時、本当に本当に。
今まで聞いたこともないくらい優しい声で名前を呼ばれて。
思わず目を開けてしまった。
いつのまにか覆いかぶさるように智は俺の顔を眺めていて。
とても優しく俺のこと見下ろしていて。
「智……?」
息が乱れてうまく酸素が入ってこないけど、じっとその顔を見ていたい…何時間でも何日でも…そんな衝動に駆られた。
「どう…したの…?」
ふふっと智は笑った。
そのままゆっくりと智は俺にキスをして。
そのままゆっくりと俺の中に入ってきた。
「さ…と…」
震えてしまって。
うまく息をすることができなかった。
彼が俺の中に居るという圧倒的幸福感に、身も蓋もなく乱れてしまった。
汗塗れになりながら俺を穿つ智は、じっと俺を見つめている。
まるで目の裏に俺の痴態を焼き付けるように。
見て欲しくないのに、そう思うほど裏腹に体は燃え上がるようだった。