第16章 Matthew10:34
「ほら…ここ凄え」
膝でぐりぐりと熱を押して、翻弄している。
「ひゃ…やだ…やぁ…」
もっとダイレクトに触ってほしいけど、智の指は俺の後ろで蠢いてて。
「なんで?こんなに汁垂れ流してるのに、嫌なんだ?」
「ちが…」
「じゃあなにが嫌なんだよ?」
ボソボソと耳元で囁いている声はいつもよりも低くて。
別の違う誰かがそこにいるような気がしてくる。
隣にいるのは智のニオイなのに。
「触って…欲しい…」
そう言った途端にぐりっと中で指を抉るように動かされた。
「ああっ…」
勝手に体が跳ね上がるのを智の足が止めるような格好になってしまった。
「こんなに後ろだけで感じてるのに、前も触って欲しいんだ?」
「うん…」
目を閉じて、真っ暗な中に居るはずなのに…
そんな言葉を囁いている智の顔が、瞼の裏にありありと見えるようだった。
上気した頬に俺を射すくめるような顔で見下ろしている。
まるで狩りをする野生の獣のような目だ。
それがますます、背中を通る何十本もの快感の線を濃くしていく。
智の気配がふっと消えたと思ったら、俺の熱は智の腔内に入ってしまったようだった。
「やっ…智っ…」
急激な快感に体がビクビクと跳ねてしまうのを止められない。