第16章 Matthew10:34
「智…これは俺の友達が調べてくれたんだ。幼稚舎…小学生の頃からの友達が、調べてくれて…」
智の涙が溢れたままのきれいな瞳が、俺を見上げた。
「俺達のこと、知ってるのか?」
「ううん…ネットで知り合った友達だって言ってある」
そう言うと少し残念そうな…
それから、少し悔しいような顔をした。
「…和也に、その人にも手を出すなって言っておかないと…」
「あ、やっぱり…」
「え?」
「ううん、なんでもない」
やっぱり、俺が智のこと調べてるって言ったの、和也って人だったんだ。
「翔…」
「ん?」
「…この先も絶対、手出しさせないから…だから、安心してくれ」
「……わかってるよ」
それから智はちょっと無口になって。
俺も何を喋ればいいかわからなくなって。
テーブルに並んだままの美味しそうな料理が手つかずだったから、いただきますをしてふたりで味わった。
とても、とても美味しい。
今までの人生でこんなに美味しい食事したことがないというくらい。
美味しいご飯だった。
「なあ…翔…」
「ん?」
二人で、ベランダのテーブルセットで月を眺めた。
一脚しか椅子がないから、わざわざダイニングから椅子を一個出して。
コートを着て、少し厚着をして。