第16章 Matthew10:34
いや…そんなことはどうだっていい。
とにかくこの状況によって、智があんなふうになってしまったことが、なにより俺の心をざわつかせた。
「…怖い…」
床に落ちたリモコンのかけらを拾いながら、呟いてしまった言葉は。
そうしてしまったことでより、その感情を俺に感じさせた。
「怖くなんか、ない」
そう言ってみたところで、なんの解決にもならなかった。
破片を拾い終わって、コーヒーを淹れて落ち着くことにした。
そうだ、テレビで気になっていた動画を見るのもいい。
「あ」
テレビ、どうやってつけよう。
スマホで純正品のリモコンを注文するころには、いくらか心も落ち着いてコーヒーの粉をコーヒーメーカーにセットする余裕も出た。
調べてみるとスマホでもリモコンの代替ができるらしいが、そんなの付け焼き刃だから、結局は本物のリモコンがないとこのテレビの操作は難しいとのことだった。
暫くは手動でテレビをつけなきゃならないなと苦笑いがこみ上げてくる。
あんなものを…
智は誰に投げつけたのか。
それとも人なんて居なかったのか……
「怖」
怖いことを考えてしまったが、案外的を得ていたかもしれない。
だって智には、亡くなったご家族が見えているんだから
そうして、自分をずっとずっと責め続けている。