第15章 Genesis2:16-17
「俺の家族…」
「智が殺したんでしょ?」
事もなげに、和也は言い放った。
それが俺の心臓を凍りつかせた。
「……なによ?智がそう言ったんだよ…?」
「ああ…そうだな。確かに俺はおまえにそう言った…」
喉の奥に熱い塊がある。
その塊は息を詰まらせる。
苦しい。
和也、俺は…俺の家族、殺しちゃいないんだ
誰かに、殺されたんだ
俺がたくさんの『誰か』を殺したように
「智…?」
「…悪い。今日はもう帰ってくれ」
「でも、智…」
「帰れっ!!」
ソファに置いたままになっていたテレビのリモコンを投げつけた。
「智っ…」
苦しい
苦しい苦しい苦しい
「帰ってくれっ頼むっ…」
「智どうしたの!?ねえ…一体なにがあったの?櫻井翔のせい?ねえっ」
「ちがうっ…違うっ…これは、俺がっ…俺の問題だっ…翔は関係ないっ…」
和也はベランダに面した窓に張り付いたまま凍りついたように動けずに居る。
「智ー?どうしたのー?なんかあった?」
その時、リビングのドアの外から翔の声が聞こえた。
「…あっ…」
翔に気を取られた隙に、和也が身を翻してベランダに出てしまった。
「和也っ…」
和也は怯えた目で一瞥すると、するりとベランダの柵に登った。
そのまま振り返りもしないで、和也の身体は隣のベランダのほうに消えていった。