第15章 Genesis2:16-17
和也は俺から目線を外すと、ドアを見た。
驚くほど冷ややかな視線だ。
コイツは仕事となると驚くほど残忍な手を使ったりする。
その時と同じ目をしている。
「和也っだめだっ…」
「うるさいっ…うるさいうるさいっ…」
今にも立ち上がって翔を殺しに行きそうだった。
「聞けっ…」
胸ぐらを掴んで立たせると、和也は有りえない力で俺の手を振りほどいた。
「なんで…!?男でもいいなら、どうして俺じゃだめなの!?なんであんなのがいいの!?人を使ってコソコソ智の身辺嗅ぎ回ってるのにっ」
「……?」
和也がなんのこと言っているのかわからなかった。
でもふと思い浮かんだのは、以前俺の家族のことを翔に打ち明けたとき言われた言葉。
「俺のこと…調べてる…?翔が?」
「そうだよっ…大学の友達使って智の過去を調べてるんだよっ」
驚いた。
でも不思議なほど嫌悪感は湧かない。
それどころか、翔になら何を知られてもいいって、こんなときなのに正直思ってしまって。
重症だな。
「和也…翔はな、俺の治療してくれてるんだ」
「治療…?智のことコソコソ調べることが治療なのかよ!?」
「ああ、そうだ」
俺が立ち直るきっかけになるかもしれないって言葉……翔が俺にそう言ってたことを思い出した。