第15章 Genesis2:16-17
「智ー?」
和也が視界から姿を消すと同時に、パジャマ姿の翔がリビングに入ってきた。
「なんか大きな音したけど…」
そう言って、床に落ちて砕けているリモコンと、中途半端に開いているガラス戸を見た。
それからゆっくりと俺の顔を見た。
その目には恐怖が浮かんでいた。
「…誰か、来たの?」
「……」
誰か
俺は『俺の家族みたいな』誰かを
殺し続けてきた
「誰も……」
ガタガタと身体が勝手に震える。
こんなこと初めてだった。
自分で自分のやったことに対する、感情──
今まで感じてはいけなかった
恐怖
罪悪
後悔
「智!?」
誰か
俺の家族みたいな『誰か』を
俺はたくさん
「どうしたの!?ねえ!?」
身体に力が入らない。
どうやって俺は立っていた?
「あああああっ…翔っ…俺っ…俺をっ…」
「智!?」
どうやって俺は息をしていた?
どうやって…
今まで生きてきたんだ?
「智っ…ゆっくり息をしてっ…」
「翔……誰か……だれか……」
「智っ、呼吸に集中してっ」
俺を殺してくれ
誰でもいい
俺をちゃんと
殺してくれ