第14章 1 Corinthians 13:4
コーヒーを飲み終える頃、俺が運んできた荷物を見つけたようだった。
「これ?大学に取りに行ったのって」
「うん。すごい量でしょ」
「これ全部授業で使うのか…?」
「まあ1年分ってとこかな」
「こんな量の本使うのか」
「まあ一部は電子化されてたりするから、これでも昔に比べたら少ないんじゃないかな?」
そう言ってフロランタンを口に入れたら、智がまた俺の顔をまじまじと見た。
「医者になるってやっぱ大変なんだな」
「もぐ…簡単になれたら、それはそれで問題じゃない?」
「まあな。ヘンテコなヤツが医者になったら困るもんな」
「ヘンテコて」
智は空になったマグカップを持つと席を立った。
「…もしくは、人殺しとか…」
背中を向けてぼそっと言った言葉が、心臓に突き刺さった。
「智…」
それ以上、言葉が出てこない。
「だから翔は凄いと思う」
「凄くなんか…俺は自分でしたことを取り繕うために医者になろうと思っているだけなのに、なにも凄いことなんかないよ」
「それでも…そんなたくさん勉強してまで医者になろうと思ってるの、すげえよ」
シンクにマグカップを置くと、水を出している。
俯いているから智の表情は伺えない。