第14章 1 Corinthians 13:4
智はゲラゲラ笑って俺の頭をまたぽんぽんと撫でた。
「翔は医者になるんだから、それだけで勝ち」
「ええ…?」
そんなの、人間として関係あんのかな。
「俺は人の命を奪う、おまえは生かす…」
そう呟く智は俺の顔を見ようとはしなかった。
「さ、いこうぜ。腹減った」
「うん…」
キッチンに戻って、朝食の準備の続きをした。
「いただきまーす!」
「いただきます」
もしょもしょとクロワッサンを齧っていたら、智がじっと食卓を眺めてる。
「どうしたの?」
「俺、朝食なんてここ何年も食べてなかった」
「え?そうなの?」
「そんなのいらねっていうか…夜動くことが多いから、起きたら昼になってることが多くてな」
クロワッサンを割いて、口に入れた。
「翔の家に来てから…朝起きるし朝飯も食うようになった」
「そっか…そのほうが身体にいいからね」
「うん。なんか朝飯食うと体調違うんだ。…医者の言うことは聞いとくもんだな」
そう言って俺を見て微笑んだ。
ほんと…なに。さっきから。
その笑顔、心臓に悪い。
「じゃあこれからも医者の言う事聞いて下さいね」
なんて言ってるけど、智が来る前は俺も朝食は抜きがちだった。
智が居るから…
ここに居るから食べてるんだよ?