第2章 Matthew 6:8
酷い痛みに意識が引き戻された。
「う…」
途端にずしりと全身に重力を感じた。
体が鉛のように重くて動かない。
「動かないで!」
目が見えない。
全身が痛い。
息が苦しい。
「動かないでね。今、傷口縫い終わったとこだから…」
その痛みだったか。
そんな痛み、慣れてるはずなのに…
「まだ動いちゃだめだ…我慢して…」
あの男の手なのか、俺の額に触れた。
冷たくて気持ちいい。
「ああ…熱が高いね。今、氷持ってくるから…」
そっと額から手が離れていった。
ちょっと名残惜しかった。
「寝ててもいいよ?」
寝られるか…こんなん。
「ひどい風邪も引いてるから、起きられるのは相当先になるよ。病院行かないって言ったの、自分だからね?ちゃんとここで療養するんだよ?」
…知らねえ
そんなの、知らねえ。
早く出ていかなきゃ。
おまえの命が危ないんだ──
「一人暮らしだし、いつまででも居てもいいからね。…もう、動いちゃだめだって。氷もってくるからじっとしててね?」
でも
「大人しくしててくれなきゃ、誰かに言っちゃうよ?」
それは困る
「でしょ?だから、お願い。大人しくしてて?」