第2章 Matthew 6:8
『逃げられると思ってるのでしょうか』
お願い、お願いだから
いくら走っても前に進まない
「許して…」
『こんなことが許されるはずがありません』
その声は硬く機械的で
一切を受け入れることはない
「お願い…」
『許されるはずがない』
「俺じゃ…俺じゃないっ…」
『あなたは許されない』
黒煙が迫ってくる
炎が迫ってくる
焼けただれた柱が落ちてくる
その柱を受け止めようとしたが
腕からすり抜けていってしまった
「ごめんっ…ごめんなさいっ…」
耳を劈くような悲鳴
「許してっ…許してっ…」
ああ、なんで俺の手はこんなに真っ黒なんだ
なんで俺の腕はこんなに非力なんだ
どうして
どうしてこんなことになってしまったんだ
どうしてこんなことを して しまったんだ
「許して…」
許さないで
許して
俺のマリア様
許さないで
永遠に
『父なる神は、あなたがたに何が必要かを、あなたがたが祈る前からすでに、ご存じなのです』