第2章 Matthew 6:8
「いいね?俺が縫うから」
強い意志の籠もった目。
なぜか、泣いてるように見えた。
「痛くても文句言うなよ」
無理を言う。
痛いに決まってんだろ。
「解熱剤くらいならあるから。気休めにしかならないけど」
「…ああ…」
なんとか声を振り絞った。
それに気を良くしたのか、男は微笑んだ。
「アンタ、名前は…?」
「……」
「そっか言いたくないよね…でもなんかないと不便でさ…」
気まずそうに周りを見渡すと、また俺の顔を見た。
「勝手に名前つけてもいい?」
なにかしきりと話しかけているけど。
もう言葉が頭に入ってこなかった。
ぼんやりと、その白い顔を見ていた。
違う──
イエスに似てるんじゃない
「ねえっ…アンタっ…」
頬を打たれた気がしたが、もう目が開かない。
喉が焼けるように痛い
体のあちこちが痛い、全部痛い
もう堪えきれない
「意識飛ばしちゃだめだっ…ねえっ…お願いっ…」
また頬を打たれた気がしたが、泥の中に沈み込んでいくように意識が飛んで行くのを止められなかった。
「もうっ…こうなったら縫うからねっ!?許可取ったからなっ!?」
バタバタと部屋を出ていく音が聞こえた。
それきり何も聞こえない。
暗い穴に落ち込んでいく───
なあ…
もう一回、笑ってくれよ
あんたの笑った顔…
もう一回