第13章 Ephesians4:25
ぎゅうっと逃げないように抱きしめると、ますます顔は真っ赤になった。
「や…やめてよ…」
「なんで?ふたりでひとつなんだろ?」
「い、言ってない」
「言ったよ」
「俺が言ったのは、ふたりでひとり!」
「ほら言った」
「あっ…」
もう逃げ場のなくなった真っ赤な顔の翔は、潔く諦めたようだ。
俺の胸に顔を埋めると体の力が抜けた。
「言い、ました…言いましたよ…もお…」
ふわふわと翔の髪の毛が俺の頬や顎を撫でていく。
翔の匂いが漂ってきて、最近それを感じるとなんだかよくわからないものが胸にこみ上げてくる。
ちょっとでも翔に触っていたくなって、もっと身体を引き寄せる。
「苦しいよ…」
「ふたりでひとりだろ?」
「ん…」
翔も俺の身体に腕を回して、遠慮がちに抱きついてくる。
夜、ベッドで寝るときも。
こうやってふざけているときも。
翔は俺のこと抱きしめ返してくれるようになった。
「もお…いいや、忘れなくて…」
そう言って幸せそうに笑う。
そんな翔の体温が身体に沁みてくる。
この瞬間、なぜだか満たされて。
胸があったかくなって。
何かが身体から溢れそうになる。
「ああ…忘れない…」
ふたりで、ひとり
そっか
そうだったんだ
俺達は、ふたりでひとり──