第13章 Ephesians4:25
「言ったでしょ…?そういう心も大事なんだよって…」
そう言うと、気だるそうにソファの背もたれに凭れながら俺を見る。
「大事…」
「そうだよ。俺は運動が苦手。でも智は得意。智は勉強が苦手。でも俺は得意。ふたりでいたら、ちょうどいいじゃん」
「ちょうどいい?」
「そう。ふたりでひとり……」
「ふたりで…」
そう呟くと、翔は一瞬驚いた顔をした。
「え?どうした?」
「…俺、なんか言った?」
「ふたりでひとりって」
「うっそだろ!」
「は?」
「心の声ダダ漏れかよ!!」
「ちょ、翔?」
ソファの隅っこに置いてあったクッションを手に取ると、顔を埋めてしまった。
「…なにやってんだ…?」
「しゅ」
「しゅ?」
「心の…修行…」
見てたら、耳まで真っ赤になってきた。
「翔?」
「…忘れて」
「はい?」
「今の、忘れて…お願い…」
耳を真っ赤にしたまま、翔はそんな事をいう。
「今のって…ふたりでひとりってやつ?」
「ぼふあっ…」
立ち上がったかと思うと、クッションを壁に投げつけた。
「そんな恥ずかしいこと、俺は言ってないからっ」
「いや、言…」
「風呂入ってくる!!!」
うろたえる翔が面白くて、逃げようとする腕を引っ張って引き寄せた。
「わあっ…」
勢い余って、翔は俺の上に覆いかぶさるように倒れてきた。
そのまま受け止めて二人でソファの座面に勢いよく寝転んだ。
「ちょっと!もうっ…何やってんだよっ危ないだろ!?」
「だぁいじょぶだって…俺、ちゃんと受け止めたじゃん…」
そう言って笑うと、眼の前にある翔の顔が更に真っ赤になった。