第13章 Ephesians4:25
それから数日は熱を出すこともなかった。
身体からだるさも抜けて、気分がいい日が続いた。
あんまり動かないのも体に悪いってことで、春休み中の翔とふたりでフィットネス系のゲームをしたりして体を動かした。
「あっ…智、待って…!」
「待つか!!くぉぉぉ!!」
「ああっ酷っ…!」
案外、翔はどんくさくて。
フィットネス系のほとんどのゲームは俺には勝てなかった。
その代わり…
「えっ…おい、聖徳太子って何やったんだっけ」
「えー、教えなーい」
「オイ!なんだっけ、十七条の憲法は覚えてる…あとなんだっけ!?」
「おしえな~い」
「ああっ…くそっ!死んだじゃねえか!」
「惜しかったね!あと一問だったのに」
「あとちょっとだったのにいぃぃぃ…」
クイズは絶対に敵わない。
無理…
もともと頭良くないし…
高校だって最後まで行ってないし…
だめなら親父の会社を継げば良いとか、安直なこと思ってたから勉強してなかったのが悔やまれる。
間違えてばかりだと、なんだか翔には一生頭が上がらない気がして凹む。
「でも智がこんなに負けず嫌いだとは意外だった」
ソファの隣に座りながら、翔はくすくすと笑ってる。
「は?負けず嫌いなのは翔だろ?」
「ううん…俺はほら、できないことはできないって潔く諦めてるから…」
「俺が潔くないみたいな言い方スンナ」
「そうじゃないって。そういう諦めないことだって人類の発展には大事なことなんだよ?」
俺がクイズで負けて悔しがってるのが、できないことだから諦めろと暗に言われてしまったようで腹が立つ。
翔に、じゃなくて。
できない自分に。
「…あいにく翔みたいに物分りが良いわけじゃないからな」
「ぶぶ…」
ほら、もっと笑われたじゃねえか。