第13章 Ephesians4:25
「でも俺、格闘技とか習ったこと無いし…」
「習って身につくもんじゃねえよ。あんなの」
「そうなの?」
「実践あるのみだ」
「智は実践ばっかり…」
言いかけて、翔は口を噤んだ。
「…逆に、翔に守ってもらわなきゃな」
「えっ!?」
「頼んだぞ」
「えっ…ど、どうしよう。どうやって守れば良いんだろ」
真剣に考え込んでしまった顔を見て、笑い転げた。
「な、なんで笑うんだよ!」
「いや…なんでもない…」
「なんでなんでもないのにそんなに笑うんだよ!?」
「ぐふふふ…」
しばらく笑っていたら疲れてしまった。
ふと見上げると、翔は俺のこと微笑んで見おろしてる。
その微笑みは、綺麗で。
ただ、綺麗で。
笑いすぎてしょぼしょぼした目には眩しすぎて、少し目を擦った。
「どうしたの?」
「…早く風呂入ってこいよ」
「うん。ほら、布団ちゃんと被って?」
笑いすぎて脱いでしまった布団を、また被せてくれた。
「3月だけど、今晩は冷えるね」
「ああ…」
「寝てて。風呂から上がったら、まだやることもあるし」
「わかった」
翔が部屋を出て行って、部屋の中は暗くなった。
目を閉じたら、翔の微笑む顔が瞼の裏に蘇ってくる。
どうしてあんなに、無心で人を好きになれるんだろう。
俺なんかを助けようって思えるんだろう。