第13章 Ephesians4:25
翔は笑いながら、俺の被ってる布団を俺の肩まで引き上げた。
「…旅行とかいかないのか?」
「なんで?」
「友達とかいるんじゃないのか?」
「ああ…そういうのは医学部に入るって決めた時に諦めてるよ。だから卒業旅行はヨーロッパ回ったし」
「よーろっぱ」
「だから春休みみたいな期間が短いのに、無理やり旅行とかいいんだよ」
「…そーですか…」
そうだった…翔はお坊っちゃんなんだった…
中学の卒業旅行がとしまえんの俺とはレベルが違うんだった。
「まあ勉強は春休み中でもしなきゃいけないしね。来月早々テストあるし。だから家でのんびり過ごす予定だよ」
それに…俺がいるから旅行とかいけないことも、スマートに俺に気を使わせない。
お坊ちゃんだから感覚が違いすぎて言動が理解できないこともあるが、翔はとても優しい奴だということは身にしみてわかってる。
そうじゃない奴もいたが、俺が世話になったゲイやおかまは不安定な奴が多くて。
今思えば性同一性障害や同性愛者だから受けるストレスとか、ホルモン治療とか。そういうものもあったんだろうけど。
酒を飲んでは暴れたり自傷することも多く、性行為を求めるのも頻繁で…振り回されてばかりだった。
でも翔は、育ちが良いからかそんなこともなく。
俺のこと思って、俺のためをだけ思って行動している。
こんなこと、今までされたことがなくて。
ただ、戸惑ってる。
どうしていいか、わからない。