第13章 Ephesians4:25
「お、いい匂いしてるな」
「今日は冷食シリーズだよ」
リビングに入っていくと、ダイニングテーブルにはすでに惣菜の皿が並んでいた。
「冷食…?」
「まず智のは冷凍のおうどんに、レトルトのきのこのパスタソースをかけたものだよ。同じ小麦粉だし、絶対美味しいよね」
「うまいに決まってる」
「あとは…」
翔はニヤリと笑うと、フライパンごとテーブルに餃子を出してきた。
「俺は、いつもの餃子を丼に乗せまーす!」
「おお~」
「更に乗せます!」
「おまえどこ見て喋ってんだ?」
「葱塩のせギョーザ!」
「それ味の素のやつじゃねえか…」
俺の家も……
家族が死ぬ前の俺の家も、こんな温かな日常だった。
俺の家族を殺した奴のことを調べるには、雅紀の力を借りるのが一番いいと思った。
雅紀は殺しは直接はしないエージェントという立場だ。
エージェントをやっていくには情報が命だと前に言っていたことがある。
事実、雅紀の握っている情報はあらゆる分野で機密と言えるようなものだった。
それは俺たちの仕事に、ぬかりなく発揮されていると言っていいだろう。
それは今まで仕事をしてきて、嫌というほど実感している。
雅紀は情報を金で買っているとも言っていた。
だから家族を殺した奴のことを調べるには、雅紀に金を払ってやってもらうのが一番の近道だと思う。
だって警察が調べて出てこなかったものが、普通に調べて出てくるわけがないじゃないか。
そのためには、金はいくらあっても足りないだろう。
だからまた、人を殺す仕事に戻るしか無い。
そう思っている。