第13章 Ephesians4:25
「智、もうすぐできるよ。どうする?起きる?」
点滴が始まってうとうとしていると、翔が寝室に呼びに来てくれた。
「ああ…起きようかな。一日寝てたし…」
「じゃあ、あとちょっとでできるからゆっくり来て。点滴の管、気をつけてね」
「うん」
ゆっくりと起き上がると、点滴のせいか身体が随分楽になっていることに気づいた。
ほっと息を吐き出すと、そろりとベッドから降りた。
情けないことに、こんな動作をするだけでもベッドから転がり落ちたことがあって、気をつけている。
これだけ筋力が落ちているんだから、仕事に復帰するとき困るだろうな…
「よし、行くか…」
ゆっくりと点滴のぶら下がってる棒を動かして、歩き出した。
…やっぱり俺はあの世界に帰るしか無いと思ってる。
今まで、家族のことに向き合おうと、翔とはいろんなことを話した。
苦しくて逃げ出したくなったこともあるけど、それでも向き合っていかなきゃ智は前に進めないって説得されて。
ずっと家族の死と向き合ってる。
まだ向き合い始めて少ししか時間は経ってないが、やはり家族を殺した犯人を探し出して話を聞かないと、なんにも解決しないと思った。
だから俺は元気になったら、あの世界へ戻る。
これはまだ、翔には言えてない。