第13章 Ephesians4:25
消毒が終わって、ゴム手袋をつけると腕の血管を探っている。
「ここでいいかな…じゃ、ちょっとチクンとするからね…」
「ん…」
少しの痛みがあって、翔は手際よく針を腕に入れて管を固定した。
「もう緩めていいよ」
「ああ」
腕に巻いていた駆血帯っていうのを取ると、翔はその間に点滴の袋に針を差して俺の腕から伸びる管と繋げた。
「…もうこんなこと繰り返してるからさ、実習で穿刺の練習してるとき、すごく上手だって褒められるようになったよ」
点滴の速度を調整し、その下にある透明な管を覗き込んで落下の速度を見てる。
「俺の腕で実習してるようなもんか」
「ありがとうございます。実験体様」
「なんだと…?」
実験体様はワガママだから、翔に晩飯の用意をするよう命じた。
「わかってるよ…」
くすくす笑うと、俺の額に手を乗せた。
「今朝より熱は下がってるね」
「ああ」
「食欲はある?」
「少しある」
「そっか。じゃあおかゆじゃなくてもいい?」
「ああ」
「じゃあ消化のいいもの用意してくるね」
「くれぐれも…」
「ご飯は全部レンチンでできるから安心して」
「ヨシ」
大きく頷くと、翔は爆笑しながら部屋を出ていった。