第12章 Ave Maris Stella
「…もしもし?潤」
『どうしたの、こんな早く』
家を出て直ぐに潤に電話した。
本当はメッセージでよかったんだけど、どうしても早く言ってしまいたかった。
ずっと迷ってたんだけど、智のあの事件のこと…
潤にちゃんと調べてもらおうと思った。
そしたら絶対、智の助けになるはず。
「すまん。今日、実習があるから早く家を出たんだ」
『ああ…そっか…医学部は大変だねえ…』
「あったんだ」
『え?』
「あの中に、あったんだ」
『ほんと!?』
どたんがっしゃーんとなんだか凄い音が聞こえて、通話の相手は無音になった。
「ちょ、じゅーん?」
『タイム…待った…おぅ…ふ…』
「お、落ち着け?」
『落ち着けるわけないだろ…どの記事だったか教えろ!』
「ああ…今、移動中だから落ち着いたら送るから。とりあえず知らせたかったんだ」
『何だよ!気を持たせるなよ!俺、午後から日吉のキャンパスに理工学部の奴らのインタビュー取りに行くんだから暇じゃねえんだよ!』
寝起きだからか、超絶機嫌が悪い。
午後の予定なんだから、今キレまくってる理由がよくわからないが、寝起きの潤はいつも理不尽だったのを思い出した。
ほかはだいぶ大人になったのに、高校生のころから寝起きの不機嫌さだけは変わってないから、笑ってしまう。
『何笑ってんだよ!?』
「すまんすまん…週刊未来の記事で、犯人である息子の顔写真が出てる記事の…」
『うん』
「大野 智って名前を出してる記事だ」
『あああ!わかった!あの薄っぺらい記事か!』
「なのに実名をご丁寧に出してるやつだ。あれで間違い無いと思う」