第12章 Ave Maris Stella
ふと、あの記事が脳裏に蘇った。
智のことや、ご家族のことを下品に書き立ててる週刊誌の記事のコピー。
たしかあの記事には、犯行動機について詳しいことはわかってないって書いてあったはずだ。
この一家の周辺の人間関係にも、問題はなかったと。
「…そんなに金があるならさ、ご家族のこと調べてみたら…?」
「え?」
怯えた顔をして、俺のこと見た。
でもこれはずっと考えていたことだから、言ってしまったほうがいいと思った。
「今、探偵とかも会わずに仕事を依頼することもできるよ。なんなら俺が代行してもいい。だからご家族のこと調べて、犯人に繋がるヒントを探ってみたらどうかな」
「…な、何を言って…」
「だって智、治らないよ?」
そう言うと、苦しそうな顔をして俯いている。
「ずっとそうやって魘されて、それで罪を償ってるつもりでいるの?」
「…そんなつもりは…」
ちょっとキツイ言い方になってしまって、気を静めようと水を少し飲んだ。
「…智が犯人じゃないんだったら、きっとご家族の周囲にいる人物が犯人だよね?」
「……え?」
初めて気づいたという顔で俺を見た。
「親戚の人かもしれないし、会社の人かもしれない。ご友人かもしれない…もしかしたら、その中のどれかに犯人がいるかもしれないじゃないか」
「はん…にん…」