• テキストサイズ

Maria ~Requiem【気象系BL】

第2章 Matthew 6:8


「電話って…スマホだよね?」

男はドア横の壁に目を遣ると近づいた。
壁にフックが幾つかあって、濡れた俺の服と革のジャケットがハンガーに掛かって干されていた。

ってことは俺は今、服を着ていないのか。
そんなことすらわかっていなかった。
相当、やばいかもしれない。

「これ、触ってもいい?」
「ああ…頼む…」

もう今更なのに、なに断り入れてんだ。
あくまで、俺の意志を尊重するってことか。

「ここ?胸のポケット?」
「…ああ…」

すぐ、松岡のじいさんに電話して……

「……いや、いい」
「え?」

だめだ。
松岡のじいさんに知られたら。

こいつ、殺られる。


俺の顔を見てしまった
俺が何処に居たか知ってる


確実に、じいさんは殺す。
雅紀だって同じだ。
容赦なく殺して、跡形もなく死体を始末してしまうだろう。

「でも……」
「頼む…少し休ませてくれたら、出ていくから…」
「だっ…だめに決まってんだろ!?死ぬぞ!?」
「あんたに迷惑掛けたくないんだ」

あんたも死ぬんだぞ──
それも周囲には、蒸発かなんかだと思われて
ろくに警察も探さないよう状況証拠作られて
誰にも探されず海の底か地の底か

そんな死に方、したくねえだろ

「死なれたほうが迷惑だって!」

いつもなら
いつもの俺なら、殺してる

でもなぜか

俺を見下ろしてるあの顔が、イエスみたいに見えたから

だから……

/ 364ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp