第12章 Ave Maris Stella
「翔…ちゃんと眠れたか?」
「うん」
「本当に?」
「魘されていたのは短い時間だったから…だからちゃんと寝てるよ?安心して」
今日のパンは、こんがりと焼けていて香ばしい。
トーストはバターを死ぬほど塗って食べるのが好きだ。
塗り終わってから智を見ると、ぼけっとしたまま食べていない。
「智…食べないの?」
「ああ…食うよ」
寝癖がついたままの髪で、背中を丸めてパンを齧っている。
別に外に出るわけじゃないから、いつも智の髪の毛はあっちを向いたりこっちを向いたりしている。
もともと短くしていたのに、ここに来てから髪を切りに行っていないから、最近は余計に髪の毛はとんでもないことになっている。
「髪…伸びたね」
「そうか?」
「全然切りにいってないもんね?」
「ああ…そうか。なあ、帰りにハサミ買ってきてくれるか?」
「え?」
「俺、自分で髪の毛切ってるから…」
「ええっ!?」
またカリッとパンを噛むと、もしゃもしゃと噛みながら俺の顔を見てる。
「じ…自分で髪の毛切っちゃうの?」
こくこくと頷くと、得意げな顔をする。
「百均に、はさみとか櫛がついてるハサミとかもあるから、頼む。あと、ケープもな」
「え…100円ショップ?」
「うん。場所によってはないかもしれないけど、でっかいとこなら大抵ある」